乙女ゲーム夢2

□自分だけのものであればいいと
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「……」

「……」







やっと仕事が終わって龍也さんの車に乗り込んで移動中。



今まで龍也さんは必要最低限しか話さなかった。




それはやっぱり龍也さんが怒ってるからでもあるし、私が怖がって話しかけるのを躊躇ってるせいでもあった。




「……まだ、怒ってますか?」





恐る恐る尋ねた私の言葉に龍也さんは前を向いたままぴくりと眉を動かした。




その様子にまだ怒ってるんだ、と思って私は肩を落とした。




信号で車が止まったとき、勇気を出してそっと龍也さんの服の袖をきゅっと握る。







「謝りますから…久し振りに会えたのに、怒ったままなんて、嫌です」







どうしよう…なんでだろ、泣きそう。




車が動き出す。




でも龍也さんは黙ったままで。




もしかしたら私たちは今日この日限りで終わってしまうのかもしれない。




そんな風に思って本気で涙腺が緩みそうになってきた。




しばらく走ると龍也さんは路肩に車を停車した。






「――……はぁ」





ハンドルに身を伏せてため息をつく龍也さんが怖い。







次顔を上げたとき彼に否定の言葉を吐かれたらどうすればいい?





びくびくしながら待っていると、龍也さんが私に向かって尋ねた。






「…そもそもお前、なんで俺が怒ってるかわかってんのか?」






「……」

わからない。








「わからねぇのかよ……それであの破壊力出すのかお前は」





「破壊力?」






私が首を傾げると龍也さんは再び大きなため息をついた。





「…ったく」






「龍也さん、あの……」








「もう林檎と抱き合うのはよせ」





「え?」






「あいつは男だ」






いつになく真剣な瞳に私は目をぱちくりさせた。






「いいか? あいつは好きで女の格好をしてる。けどな、心まで女になったわけじゃない」






子供に言い聞かせるように。
龍也さんは私の眼を見ながらそう言った。






「……俺はお前があいつとべったりくっついてるのが、非常に不愉快だ。見てて気分が悪い。お前がくっつく男は俺だけで十分だ」






「……」






噛んで含めるように重ねて言った龍也さんの言葉を理解したと同時に私は顔がほてるのを感じた。





どうやらやきもちを妬いてくれたらしいと分かって。




分かりやすく不機嫌になるこの人がいっそう愛しくなった。







「…龍也さん」





「あ? なんだ?」





「私には、龍也さんだけですから」






にこりと微笑んでそういうと、龍也さんは顔を赤くしてそっと視線を逸らした。






「……わかってりゃいいんだよ」






→おまけ
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