乙女ゲーム夢2
□ダンス!
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踊りを指導してほしい。
真剣な顔で請われた私は断る術も知らずにただうなづいた。
音楽に合わせて踊るトキヤを見守りながら、うぅむと唸る。
「……元気が出る歌、ね」
たしかにクラクラしちゃうよね、なんて思っていると1コーラス分を躍ったトキヤが私の顔を見た。
「名無しさん。どうですか? どこか直した方がいい個所などは?」
さすがはトキヤ、というか…踊りは完璧で直した方がいいところなんてそんなにない。でもあえて言うなら……。
「音也と二人で腰回すとこあるでしょ?」
「ええ」
「そこ、もっとエロくしたらいいと思う」
「……エロく、ですか?」
怪訝な顔をしたトキヤにこっくりとうなづく。
「需要と供給は釣り合ってるから大丈夫! 存分に色気出して!」
「……こうですか?」
ああもう……素直な子!
言われるがままに大胆に腰を振り始めたトキヤに思わずにやけながら私は首を横に振った。
「なんか違うの! もっとなんていうか……ゆらゆらしてる感じ?」
「……こうでしょうか?」
……傍から見ればこの光景はなんて破廉恥な光景に見えることだろうか。
「やっぱりなんか違う?」
「…そこまで言うなら見本を見せてください」
やや憮然とした表情で言われて私は「えっ」と固まった。
まさか自分に振られるとは思ってなかった。
「私に散々リテイクを出しておいてまさか自分が踊れないなんてことはないでしょう?」
心の底からそう思ってます。
というか踊れなかったらどうしてくれようこのやろう。
トキヤの心情が透けて見えて私はひきつった笑みをもらした。
「ええと」
「音楽が必要なら流しますよ。途中からでいいですね?」
問答無用で音楽を流されて私は慌てて音楽にのせて体を動かした。
「ここで、腰を、ゆらゆらさせて…こんな感じ?」
うげ、恥ずかしい……っ!
トキヤに見られてると思うとなおさら恥ずかしい!
そう思いながらも私が腰を振るとトキヤが難しい顔をしてつぶやいた。
「なるほど……確かにエロいですね」
自分で納得して練習のために腰を振り始めたトキヤにほっとする。
なんとか合格をいただけたようだ。
「……なんていうか、トキヤってクールなキャラなイメージでしょ?」
「…そう、でしょうか?」
「音也みたいに明るいさわやかキャラではないでしょ?」
「まぁ…そうですね」
「だからさ、そこをもっと押せばいいと思うの」
「…押す?」
「クールなイメージに、ちょっとだけセクシーさを足すの。あ、でも指くるくる回すところはかわいくやってね? でも体に手を添わせるところはエロくして」
「……ギャップを作るというわけですか?」
「そういうわけです」
「分かりました……やってみます」
素直に頷いてやってくれるトキヤが愛しいなぁと思う。
そんなこと口が裂けても言えないけど。
「トキヤ、ファイト―!」
とりあえず今はトキヤが出来るだけエロく踊れるように指南します。
2011/10/21