乙女ゲーム夢2

□鏡ごともまた真実
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「いいのかい?」




「お兄様……」





 浮草のようなお兄様が柱に背を預けるようにして私を見つめた。






「僕はね、斯波君との結婚には反対だ。金を使ってお前を買おうとするような行為を認められるはずがないからね。でも……お前が彼を好きだというのなら、僕はそれにまで反対するつもりはないんだよ」






「……ごめんなさい、お兄様」




「どうして謝るの?」






「私、お兄様からも大切な人を奪ってしまったから……」





「なんの、ことだい?」





「……わからなければいいの。気分が悪いから私は部屋に戻るわ」





「名無しさん?」





 不思議そうなお兄様の声にも振り向かず私は自室へと戻った。










 部屋に入ったと同時に涙がぽろりと頬を伝う。






 もう、会えない。




 わかりきっていたことだ。でもこれほどまで…身を切り裂かれるように辛いとは思っていなかった。







「斯波、さん……」





 何も考えずに彼に縋ればすべてがうまくいくとはわかっていた。




 「彼」の復讐はすでにはじまっている。




 私ができることは、この身を、華族令嬢という身分を差し出すことだけ。なのに……それを拒もうとする自分がいることも確かだ。





 彼がいい。



 あの傲慢で自信家で努力家で……子供のような繊細なあの人が。





「私…どうなるのかしら」





 今自分がどんな選択をしているのかなどわからない。






 でもいっそ……壊れてしまえるならいいと思った。


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