乙女ゲーム夢2

□本気かどうか
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「君といるとネタに困らないよ」





どこか悪戯めいた瞳でそう言われて私はいつも言葉に含まれた他の意味を探す。




それだけじゃない、愛とか恋慕とかそういったものがないかと探して……現実に打ちのめされるんだ。





だって彼は私のことなんて本気じゃない。



私のことなんて好きじゃない。



ただインスピレーションをかきたてられる存在だというだけで。













「あ、一条さん」



久し振りにあった顔見知りに手をあげると向こうも手をあげて答えてくれた。



「久し振り。元気?」


隣いいですか、と聞いて一条さんの隣の席に腰かける。マスターにマティーニを頼んであらためて彼を見ると、いつも通り。一部の隙もない出来る男の姿。



……さすが抱かれたい男ナンバー2。




「そこそこ元気です」



「はは。そうか」



「一条さんは?」



「まぁまぁ、かな?」



同じような受け答えをして二人で「ははは」と笑う。




「今日は一人ですか?」



「いや、あと一時間くらいで緒方が来るよ」



飲みたくなったからここに来たのに、聞きたくなかった名前が聞こえて私は眉間にしわをよせた。





「そうですか……じゃあ30分くらいで帰ります」





「ええ? 君たち付き合ってるんじゃなかった?」




私の返答に怪訝な顔をする一条さんに私はかすかな笑みを返す。




「あの人にとってはネタ帳みたいなものですよ。もしくはセフレ」




「……荒れてるね」




「そこそこ」




出されたマティーニをくいっと一気にのどに流し込む。





疲れた体にアルコール一気飲みしたせいで一瞬くらりときた。そもそもそんなに強くない。




最近彼に縋りつく自分に悲しくなって、それを忘れようと思ってここに来たのにタイミングが悪すぎる。








「……どうかした?」





「……」





「飲みたいなら止めないけど……緒方に怒られるよ?」






「……酔いつぶれたら面倒ですもんね」




再び一気。




急ピッチで一気を続けてもいい酔い方できるわけないのに。







「ほんとに荒れてるね……俺でよければ話聞くけど?」





三度一気飲み。



目の前が揺れた気がして、一条さんが慌てて手を伸ばしてるのが見えた。




……ということは態勢崩したの?




心配そうな一条さんのアップが目の前にあって。





私は思わず呟いた。








「……私」




「え?」





「……一条さんを好きになればよかった」





「!」






言い終わるかどうかというとき、ぐいっと腕を力加減なく引っ張られて私は腰を抱えられていた。





「ん……っ!」





そして気づけば口づけられていて。



でもその感触はよく知ったもので。



逃がさないとばかりに深くなる口づけと視界で揺れる赤い色に酔いしれる。




ブラックアウトする直前、切なそうな声が聞こえた。









「だれが一条なんかに渡すかよ……君は俺のものなんだから」










(知らぬは本人ばかりなり)


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