乙女ゲーム夢2

□本気かどうか
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「行き詰ったからうちに来てよ」










仕事終わりにかかってきた電話に心ときめかせながら訪れても待っている人は……。











「すー……」




気持ちよさそうに眠る恋人。



「……」




合鍵を使って入ってきたはいいものの、色気のかけらもない寝顔に私はため息をついた。




「呼ばれたから来たのに寝てるんだもんなぁ……」



目にかかる赤い前髪をさらりと指でよける。




「しかも眼鏡かけたままだし」



寝にくくないのかなぁ?



そんな風に思いながら眼鏡を外してサイドテーブルに置いたその瞬間、突然手首を引かれた。




「きゃ……っ!」





ベッドにダイブして、ぎゅっと抱きしめられる。







「抱き枕はっけーん……」




「抱き枕!? ちょっと緒方さん、起きてたんですか!?」




この策士!



少し怒りを覚えながら叫ぶと、緒方さんが唸りながら私の首元を、くんと嗅いだ。




「っ!」




「……香水変えた?」



「か、変えました……」




さっきまで寝ぼけてたはずなのに、突然はっきりした声音にどきりとした。




起き上ろうとしても全身で抑え込まれていて敵わない。






「んー……前のも嫌いじゃないけど、俺好みのいい香り……」







「そ、それはよか……ひゃぅっ!」






ぺろりと首をなめられてぞわりとした感覚が背筋を這い上がる。




や、やばい、かもしれない……っ!





「銘柄は?」





「え、えっと……っ!」




この間買ったばかりの香水の名前を必死で思い出していると、「やっぱりいいや」と耳元でささやかれて、またぴくりと体が震えた。
悔しいことに彼がとる行動すべてに体が反応してしまう。







それがわかっているのかくすりと笑う声も聞こえた。










「今から堪能させてもらうから」




「!!?」




深くベッドに沈められて、戯れるような口づけが降ってきた。






「仕事に疲れた俺のこと、癒してよ」




「緒方さ……っ!」




「何かいい案浮かぶかもしれないし」




「……っ」






猫のような笑みで見つめられて切なくなりながら私は彼に身を委ねた。










(合鍵というアイテムに愛を見出す)
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