乙女ゲーム夢2
□君だけの歌
1ページ/1ページ
「トキヤはトキヤだよ。ハヤトもトキヤ自身なんだし、苦痛に感じる必要なんてないんじゃない?」
そう言ってくれる君の存在が、どれほど私にとって有難かったことか。
時々、必要とされているのはハヤトだけであってトキヤという存在はなかった方がいいんじゃないかと思う。今でもそれは変わらないけれど、そう漏らしたときいつも笑顔の彼女は泣きながらとても怒った。
「たしかに全世界に名前が知られてるのはハヤトの方だよ!? でもだからってトキヤがトキヤのこと否定しないでよ! 私が好きなトキヤのこと、否定しないでよ!!」
ああ、泣かせてしまった。
泣かせた自分自身に怒りを覚えながらも、こうして怒ってくれる彼女をいっそう愛しく感じて。
全力で私を愛していると伝えてくれる彼女が愛しくて。
「私はもう、君がいないと上手く息もできない」
そして今日、私はトキヤとしてステージに立つ。
輝くスポットライトはハヤトのためじゃなく私のためのもので。
ここにたどり着くまでの間、いろんなことがあった。
辛くて、楽しくて、切なくて、おかしくて、苦しくて、愛しい、そんな日々を一曲の歌に込めて。
その歌を……彼女のために。
2011/9/4