乙女ゲーム夢2
□相反する心・分岐(風間夢)
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「はぁ……はぁ……っ」
怖くて怖くて仕方がなくて……誰にも心を開きたくなくて私はひたすらに走っていた。
わき腹が痛くなっても足が痛くなっても……。
けれども長い間まともな運動をしていなかった身体はすぐに限界を訴えた。
そして。
「……っ!」
つまづいてしたたかに膝を打った。
……痛い。
屯所を抜け出したまではいい。けれども新選組は一度逃げ出したものに対して容赦しないだろう。殺して欲しいと願っていたはずなのに、いざ殺されるかもしれないと思うとどうしようもない恐怖に襲われた。
「……小娘」
「!?」
「……何を無様な姿を晒している?」
嘲るような声音に私は顔をあげた。
……知った顔。
月明かりの下で美しく光る金色の髪。
「……風間、千景……」
赤い瞳をした鬼はくつりと口元に笑みを刻んだ。
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