乙女ゲーム夢2

□相反する心・分岐(沖田夢)
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「あのね、名無しさんちゃん」




「何ですか?」





 
 あらたまった様子で向き直られて私は少しだけ姿勢を正した。








「僕、君に黙っていたことがあるんだ」




「はい……?」




「実は僕ね」





「……」










「土方さんのことを愛してるんだ」







「……」

「……」

「……」




「……驚かないの?」




「えっと……驚いてます。というか……えっと、どういう反応をしていいのか困ってるんです」



あれ? いま土方さんって言った?
沖田総司が敬愛してるのは近藤さんのはずで……ええとそうすると土方さんのことも敬愛してる? でもなんだかニュアンスが違ったような気が……?



「……僕が土方さんを愛してるって言っても君なんとも思わないの?」



「……」



ひたすらに困った顔しか出来なくて、沖田さんを見ると彼はむっとした顔をしてそっぽを向いてしまった。




「あの、沖田さん?」



「……君、なんとも思わないんだ?」



「思わないっていうか……なんていうか……」



「……僕だけ嫉妬してて、馬鹿みたいじゃない」



「え?」



「だから! 僕だけ君に嫉妬してて、僕だけが君のこと好きみたいで悔しいんだよ。君、僕が誰と何をしてても普通だし」



「……」



ほんのりと頬をそめた沖田さんに私まで顔に熱がのぼってきた。



嫉妬、してくれていた?
沖田さんが?



「もういいよ。君はなんとも思ってないみたいだし。土方さんまで引き合いに出した僕が馬鹿みた……」



「あの! ……あの、私、その……沖田さんが雪村千鶴と仲良くしていると……もやもやするっていうか……」



「……」



「……やきもち、やきます……」

「……」

「……」



無反応なのが気になってちらりと沖田さんを見上げると、彼はとろけそうな笑顔を浮かべていた。



「っ!」



「最初からそういう風に言ってくれればよかったのに」



「……?」




「……僕、君のことがすごく好きみたいだ」



「沖田さ……」









 優しく甘い言葉を告げられて交わした接吻は、とろけそうなほどに甘かった。

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