乙女ゲーム夢2

□相反する心・分岐(土方夢)
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 目の前で赤い液体を喉に流すその愛しい人に裂けるかと思うほど叫んだ。






 なんで……どうして。








 ぐるぐる思考が回るけど明瞭な答えは出せなかった。



 だってなぜ?


 千鶴ちゃんは……あの人とともにある。


 だから土方さんは変若水を飲まなくても済んだはず。飲まずに戦死したはず。なのに……これはいったいどういうことなんだろう。














「名無しさん」




「っ」




 やっぱり私のせい?



「……なんて顔してやがる」




 傷のない体で、いまは黒い髪をして……やさしい紫の瞳で私を見つめてくれる。言葉づかいは荒いのに、どうしてそんなにやさしい響きをしているんだろうか。


 ごめんなさい、という言葉が喉にひっついた。


 土方さんはなにも言わずに私を抱き寄せてぬくもりを感じさせてくれる。



「……あんまり」



「うん?」



「あんまり羅刹化しないでください」



「……そりゃあ」



「……約束、しなくてもいいけど……しないようにしてください」



 あれになること自体が命を縮めるというならば……ならないでほしい。


 でも同時に見えるのは彼が生き残ってくれるのかもという切な期待。



「……でもこれは約束して」



「なんだ?」








「……土方さんが死ぬときは、私を殺してください」







「!」



「……あなたが死ねば私も後を追うんですから……あなたの手で」







 殺して。
 残酷だと分かっていても、私にはそれ以上の幸せはない。




 うなづくあなたをこれから支えていこう、無茶をしないように、そう思って私は彼に体を預けた。



 もう逃げられない。


 なら……私のできる限りで彼とともにある。










「……でももし生き残っていたら、私と……」











 声にならない望みを吐き出す。
 そんな望みが許されるのならば。


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