乙女ゲーム夢2
□相反する心・分岐(土方夢)
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「……」
自業自得、というべきか。
案の定私は風邪をひいて部屋で布団にくるまっていた。
どうして同じようにしていた土方さんが風邪をひかないのかふしぎでならない。
朝起きて私の状態を確認した時、彼はばつの悪そうな顔をして「悪かった」と言った。いったいどこらへんの行動をそう思っているのだろうか。
「あ、ほんとに寝込んでいるんだね」
「……」
うるさいのが来た、と思ってしまったのはやっぱり完全に絆されたからなんだろう。
「やあ、元気? 元気なわけないよね。だって寝込んでるんだもん」
「……」
真上から楽しそうにのぞきこまれて返す気力もなく私は目を閉じた。
なのに。
「……やめへくらはい」
鼻をぎゅっとつままれて眉間にしわがよる。
彼には私の荒い息が聞こえていないのだろうか。
「あは。おもしろいなあ」
「おきらはん!」
「!」
私がかけた声に彼はぱっと手を離した。
「……どういう心境の変化なわけ?」
「……ほっといてください」
「……へえ、そういうこと言うんだ?」
「!」
ぐ、っと動かない手首を布団の上に縫いとめられて真上にのしかかられる。
この人ってこういう悪ふざけをする人だったのか?
「! ねえ、もしかしてさ、この跡をつけた人のせいかな?」
「あと……?」
沖田さんの眉間によったしわにきょとんとすると、沖田さんがざらりと私の首筋を舐めあげた。
「っ!」
その感触は昨夜のことを思い出させて私は顔が熱くなるのを感じた。
「やだ……っ」
「総司! なにやってんだ!」
「ひ、じかたさ……っ」
「……なるほどね、土方さんだったわけだ」
「お前……やっていいことと悪いことがあるだろうが」
沖田さんは憮然とした表情のまま私の上から起き上がってじろりと土方さんをにらみつけた。
「僕は悪いことなんてしてませんよ。したのは土方さんでしょう?」
「……」
反論するわけでなく受け止めた土方さんに沖田さんはため息をひとつついて私の方に向き直った。
「嫌になったらいつでもおいで。僕の隣はあけておくからさ」
「……?」
「……鈍さは相変わらずなわけか……まったく嫌になるね」
「あの」
「……総司」
「うるさいなあ。土方さんは黙っててくださいよ」
「お前なあ……」
「……ほんと、あなたって人はいつだってずるいんだから……」
沖田さんが部屋を出て行って、その背中がどこかさみしそうに見えて私は土方さんの顔を見た。
「……気にすんな」
くしゃりと頭をなでられる。
重なる唇に、もう逃げられないと悟った。
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