アリス夢
□ケスクセ?(グレイ)
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どこへ行けばいいのかわからない。
「……彼女に用があるのなら俺を通せ、と言ったはずだが?」
「私は、クローバーの塔の彼女には用はない。名無しさんに用があるんだよ」
険しい顔で言い放つブラッドとグレイに、私は狼狽した。
「名無しさん、来なさい」
「っ」
私の手を取って歩き出そうとするブラッドに、グレイは悔しそうな顔をした。
……でも、その中に見える諦めの色。
どうして、そんな顔をするの?
グレイ……。
グレイにそんな顔をさせちゃいけない、と思ったら、私はすんなりとブラッドの手をほどいていた。
振り向いたブラッドの驚いた顔、と、振り向いたときのグレイの驚いた顔。
その二つを見て、愛しいと感じたものを受け止めて、私はもう一度ブラッドに向き直った。
「……」
「黙って、飛び出してごめんなさい」
「……決めたのか、行く先を」
「うん。ブラッド、ありがとう」
「……いつでも、逃げたくなったなら来ればいい。私の元へ」
「うん。ありがとう」
私は、ぺこりとブラッドに頭を下げた。
悲しそうな、さみしそうな顔に後ろ髪をひかれそうになったけど。
でも、私が愛しいのは、母親において行かれたような顔をしているあの人だと気づいてしまった。
「行こう、グレイ」
「……名無しさん?」
「いいから、行こう」
グレイの腕を引いて、私は彼の部屋まで引っ張って行った。
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