アリス夢

□ケスクセ?6
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「名無しさん!」
彼らの執務室で、彼女の体は重力に引き寄せられるように身を崩した。





「ん……」

うっすらと目を開けると目に飛び込んできたのは真白な天井。
いつの間に就寝したのだろうか、と寝たまま首を捻ると「起きたのか」と声をかけられた。


誰もいないと思っていたのに驚き私はそちらに頭を巡らした。なぜか体はだるくて持ち上がらなかった。


「……グレイ?」


「ああ、俺だ。どこか気分が悪いところはないか?」

よしよしと頭を撫でてくれる。

……彼は知っているのだろうか?私がその仕種が好きで好きでたまらないということを。

思わず目を細め「大丈夫」と小さく漏らした。

しかし彼は信用しなかったらしい。

手に持っていた書類をさっとサイドテーブルに置き立ちあがった。

「何か軽い食事でも貰ってこよう。薬を飲むにしても何か食べないとな」


「……これ、なんの書類なの?」


薬なんて飲むものか、と思いながらそっと話題を逸らすと彼は「ああ」と呟いた。

「会合だ」
「会合?」
「ハートの国の舞踏会みたいなものだよ。ルールなんだ」

ルール、それがこの世界に病のように付き纏うものだと知っている。

みんなみんな、それに縛られて、でもその縛りがないと彼らの存在すら危うくなってしまう。


「……舞踏会?」


私は首を傾げた。
なんだそれ、といった風である。
そんな私にグレイは目を見開いた。

「舞踏会だ、行かなかったのか?」

「……うん」

そんなものがあったことすら知らなかった。

「……役持ち達が集まる舞踏会だ。時計屋は君を連れていかなかったのか」


「あ〜……そういえばユリウスが何日かいなくなった時があった、かも?」



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