アリス夢

□ケスクセ?3
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そう。



諦めた。なのにどうしてここにあるのか。

「グレイ?えっと……どうして……?」

「ああ、読みたかったんだろう?それで合っていたか?」

戸惑う私にグレイは取り寄せる本を間違ったのかと少し顔を不安げに歪ませた。けれども彼は何も間違っていない。私が読みたかったのはこの本だ。


ぶんぶんと首を振って彼の言葉を否定しておずおずと尋ねた。


「わざわざ取り寄せてくれたの?」
「あ……まぁ、ついでだったからな」

うっすらと頬を染めてそっぽを向く彼がいつになく照れているのだと気づくと、読みたかった本が手元にあることより何より彼の気遣いがとてつもなく嬉しかった。

「……っ、ありがとう……っ!大切にするね!」

「ああ、喜んでもらえてよかった」

グレイの頬も心なしかゆるみよしよしと私の頭を撫でてくれた。

その感覚もとても嬉しくて。

「すごく嬉しい……」

頬がゆるむ。

泣きたくなるくらいに嬉しいのだ。


「……ずるい!グレイは私のことはこんっなに雑に扱うのに名無しさんのことはそんなに大切にしてっ!」
「だから、自業自得だと言っているでしょうが。そんなこと言ってる暇があったらさっさと仕事を片付けてください」

ぴしゃりと跳ねのけたグレイにナイトメアは悔しそうにしながらもちゃんと書類に向かって仕事をしだした。

それをクスクスと笑いながら見る。




日常がすべて私から逃げていくというのなら、これは日常じゃなくてもいい。



でも今はこのままで。




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