アリス夢

□怖いもの
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会合の間は手を出さない。




その協定を破ってみせたハートの騎士の前に躍り出た私は自分の体に剣が沈み込むのを感じていた。




「名無しさん!」



焦ったグレイの声。

体を支える腕。

腹部の熱。


それらを感じながら、ほっと息をつく。




――――グレイは無事ね。




よかった、と思う間もなく意識はブラックアウトした。













前髪を撫でる感触に薄く目を開くと、心配そうな顔で私を見下ろすグレイと目が合った。




「痛むだろう?」


気遣わしげなその声と優しい手つきに胸がじんとする。






ああ、私この人を守れたんだ・・・・・・。




「・・・・・・正直、俺は君に嫌われたと思っていたから驚いた・・・・・・どうしてあんな無茶をしたんだ。君は余所者なのに。替えはきかないんだぞ?」





切なげにぎゅっと眉を寄せたグレイの顔をじっと見上げて、私はゆるく首を横に振った。




「嫌ってなんか、ない・・・・・・グレイにも、替えはきかないから……無事で、よかった」



無事で、ということももしかするとおこがましいのかもしれない。

だってグレイはエースの攻撃に足をすくわれることはないだろう。




「だが君は・・・・・・」



「・・・・・・好きよ、グレイ。好きだからいなくならないでほしい。今目の前にいるあなたにずっと傍に居てほしい。傍に居たい」







――――君が怖いのは・・・・・・。







ナイトエアの声がよみがえる。




わかってる。


私が怖いのは・・・・・・。








「私があなたを避けたのは…一時でも傷つけてしまったと思ったから……私が怖いのは、あなたを失うこと…あなたに嫌われること・・・・・・」



痛みを堪えて浅い息でそこまで告げると、ぎしりとベッドが沈んだ。

間近に腰掛けたグレイが体をかがめて私の額にキスを落とした。





「・・・・・・馬鹿な・・・・・・俺が君を嫌いになるなんてあるわけがないだろう」






優しく押しつけられて離れていく熱に小さく笑う。


ナイフは怖い。


だってナイフは私の大切なものを奪っていくから。





――――でも。





「ナイフで自分の身をちゃんと守ってね。ずっと傍に居てね」




懇願にも似た私の言葉を笑うでもなく、グレイは真剣な顔をして頷いた。




「もちろんだ」




2013/01/24
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