アリス夢
□認めません!
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「兄さん、あの・・・・・・非常に暑いんだけど」
こたつに入ったまま後ろから抱きしめられて私は呆れつつため息を押し殺した。
「大丈夫だ。ミカンをむいてやろうな」
「・・・・・・」
何が大丈夫だ何が。
心の中で突っ込みを入れつつ入り口で怪訝な顔をして私たちを見ているユリウスを見上げると、目元を大きな手のひらに隠された。
「見るな! 目が腐る! 目から陰気になって行くぞ、名無しさん!?」
「なるか!」
「いいやなる! 時計屋、お前と一緒にいる時間が増えれば増えるほど名無しさんが陰気になって行くんだ!」
「いや、ならないし」
冷静に突っ込みを入れるも口にミカンを一かけら押し込まれて大人しくそれを咀嚼する。
甘くて美味しい。
「どうだ、時計屋。お前にはこんな風にこの子を甘やかすことなんてできないだろう!」
まるでどこぞの芋虫みたいだな、と思いながらもぞもぞ彼の膝から逃れようと身をよじるけど、逞しい腕に遠慮なく抱きしめられた。
「認めん! 俺は認めないからな! お前と時計屋が付き合っているなんてぜっっっっったいに認めないからな!!!」
「あーはいはい」
「はぁ…」
ため息をつくユリウスにドンマイと言いたくなった。
(気分は娘を嫁に出すお父さん)
→おまけ
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