アリス夢
□もう届かない
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「グレイは、今まで本気で好きになった人はいないの?」
アリスにそう尋ねられて、俺は思わず言葉をつまらせた。
好き、という感情にすぐさま記憶が色鮮やかによみがえる。
「―――」
ナイトメア様にも見えているんだろう。
「―――昔の話だ。愛した女性はいるよ」
「…本当に好きなのね、その人のこと」
「え?」
「グレイってば、全身で好きだって言ってるわよ」
そう指摘されて、不意打ちに顔が熱を孕む。
―――だから、嫌なんだ。
少し思い出しただけで、あの頃のすべての感情がよみがえる。
そんなことをしても、辛いだけなのに。
「会えないの?」
「・・・・・・もう、何年も会っていない。俺と彼女の道は、すでに分かれてしまったから」