アリス夢

□態度だけでは伝わらなくて
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―――怒ってる?



なんで?



私も私で、おどおどとブラッドに声をかけた。



「あの、ブラッド?」





大股に庭を横切って奥へ奥へと進むブラッドは、速度を緩めず私にちらりと冷たい視線を投げた。




「―――エリオットには、あんな顔で笑うんだな、君は」



「え……」


その言葉の真意を測りかねていると、バラの香りが鼻孔をかすめた。



さっきまでとは違う、濃厚な香り。




「ここ…」



「バラ園だ。特別なものしか入れない。エリオットも、もちろんアリスもここには来ない」



そう言いながらすとんと降ろされる。


周り一面のバラの花に驚いていると、するりと首を撫でられた。


それに驚く間もなく鎖骨からバラのトップがすくい上げられていった。




「・・・・・・身に着けてくれてはいるんだな」



眉間にしわをよせたままそう言われて戸惑いながら見上げると、ブラッドは目を伏せそのバラに口づけた。



「っ」



「君の心は、いったいどこにある・・・・・・?」



「ブラッド…」



その言葉に込められた意味を正確に把握できなくてブラッドを見つめていると、ブラッドはすっと瞳を開けてそのまま私の目を見た。



「っ」



その瞳に射すくめられて、動けない。




「・・・・・・こんなことを言うのは、情けないんだが。アリスをダシにして君への贈り物をしたことをここに謝罪する」



「・・・・・・え?」




「アリスには何の贈り物もしていない。ただ君の好みを聞き出したかっただけだ」



「う、そ・・・・・・」




「嘘じゃない。名無しさん、君に好かれたくて贈り物をしていた。けど君はいつもあいまいな笑みでお礼を言ったな。何故だ? 私が嫌いか?」



「嫌いなんて……っ」



――私に、好かれたくて?




「・・・・・・」



ブラッドに、尋ねる声が、震える。



「・・・・・・自意識過剰、かもしれないんだけど……ブラッドは、私が好きなの・・・・・・?」



掠れた声に、憮然とした声が返された。



「自意識過剰でけっこうだ。私はエリオットに嫉妬するほどに君が好きなんだからな」




(態度だけでは伝わらない好意)

2012/8/31
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