アリス夢
□態度だけでは伝わらなくて
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親友と好きな人が被ることは今まで一度もなかった。
ただ。
―――親友のことを好きな人を好きになるなんてそんな馬鹿な話、自分がなるとは思っていなかった。
「アリスはどんな花が好きだろうな?」
「アリスはどんな菓子が好きだろうか」
「アリスはどんな本を好むだろうか?」
「アリスはどんな・・・・・・」
何度となくされた質問に笑みが漏れる。
そんなにアリスが好きなのね、なんて悲しすぎて言えなくて。
「ん、この紅茶美味しい…」
振る舞われたお茶の香りと舌に感じた甘みに驚いてぽつりとつぶやくと、ブラッドはぱっと顔を上げた。
「そうだろうとも。これは貴重な茶葉でな、私の一押しなんだ。気に入ってもらえたかな?」
「うん。美味しい。私も好きだわ、この紅茶」
「! そうか、なら今度から君が来た時にはこれを淹れよう」
嬉しそうにそう言うブラッドに慌てて言葉を滑り込ませる。
「アリスもきっと好きよ、この紅茶」
――――バカ、なんだから。
自分からそんな情報与えなくてもいいのに。
でも、と思う。
ブラッドに訊かれて答えるときの胸の痛みとみじめさを味わいたくない。
なら先に言ってしまおうと思ってしまう、この浅ましさを、どうかわかってほしい。
誰に願っているのか自分でもわからないけど。
「さて、そういえば。これを君に」
「・・・・・・何?」
差し出された小さな箱に、どういう反応を返せばいいのかいつも迷う。
だって私のは、おまけだから。
ブラッドはアリスが好きで、アリスの好みを知ってアリスに贈り物をするために私にリサーチしてて、だから私にもお礼のように私の好みを聞いてプレゼントしてくれる。
好きな人からもらう贈り物なのに、いつもどれだけ切ないかあなたは知らないでしょう。
「華奢なデザインでバラのモチーフがいい、と言っていただろう? 私の見立てだ、きっと君に似合う」
箱を開くと、ブラッドの言うとおり華奢なプラチナのチェーンに赤い石のついたバラのトップがついたネックレスが入っていた。
―――文句なしに好みだし、かわいい。
「・・・・・・かわいいわ」
「つけてあげよう」
ブラッドの手袋に包まれた手が器用にそのネックレスを取り上げ、後ろから私の首につけてくれる。
「やはりな、似合うよ。名無しさん」
満足そうに微笑みかけられて、私は頑張って笑みを作った。
「―――ありがとう、ブラッド」