アリス夢

□風邪の日
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「けほん……っ、こほんっ」


執務室で咳き込んだその瞬間、ばっと視線が私に集中した。














「グググググググレイ、医者だ……っ!」


「分かりました医者に行ってきます!」


「お前が行ってどうする!? 医者を呼べ!」


「ああそうか…5分以内に来なければ殺すと伝えます」


「とかげ、馬鹿を言うな! とりあえず名無しさんを寝かせてくるからさっさと医者を呼びに行け」


「わわわわ私も何か……っ!」


「夢魔、お前は誰かに言って果物を買ってきてやれ。桃やメロンがいいだろう」



「わわわわかったっ」



「こほん、こほん…っ、私、大丈夫だから…」


心配しないで、と言おうとしたらふわりと体に服がかけられた。
ユリウスの、上着。

大きくてあったかいその服に包まれて、ほっとした。
寒かったんだ。


「いきなり冬になったからな。体の調子が崩れたんだろう。顔が赤い、熱もあるな」


少しひんやりしたユリウスの手が私の額に触れる。
心配そうな目に覗き込まれて、私はきゅっと肩を縮めた。

それを見てユリウスはくすりと笑うと私をそっと抱き上げた。



「部屋に戻るぞ。ちなみに今朝は何を食べた?」


「・・・・・・」



「食べてないのか…」


「…ごめんなさい」


「後で粥かリゾットを作ってやる」


「おかゆがいいなぁ…」


「わかった」


ああ……この間も倒れたばっかりなのに、また心配かけちゃうな。

なんで私って、こんなに体弱いんだろう・・・・・・。


そんなことを思いながら、私は目を閉じた。
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