アリス夢

□構う大切さ
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「台風一過……」




エースがやっと帰って私はふぅとため息をついた。









私とユリウスを見ていたらどうにもアリスに会いたくなったらしい。




捨て台詞に「俺はアリスに見捨てられないように構いに行こうっと! はは!」と吐いて行ったあのエセさわやか男が憎らしい。






「……名無しさん」




「何?」





珍しくユリウスが私を手招きした。







大人しく近づくと、ふわりと腕を引かれて抱きしめられた。





「ゆ、ユリウス?」




うわゎ! 珍しい……







頬が火照っているのを感じながらユリウスを見上げると、彼のもまた頬を染めつつ憮然とした顔。





「?」




どうしたの、と聞きかけて私ははたと思い至った。





自惚れじゃないといいんだけど、と思いながら恐る恐る口を開く。








「あの、も、もしかして……不安になった、とか?」





「!」





「! え、え、ほんとに?」







「……お前は私のものだ」










そっと視線を逸らしたものの耳まで真っ赤なユリウスに、私は徐々に相好が崩れていくのを感じた。





「……ふふ」




「! ……」






「嬉しい、ユリウス」





「……?」







「他の人に私を取られるのは嫌なんだ?」






にやにやしながら尋ねると、ユリウスがぐっと眉間にしわをよせた。








そんなわけがあるか、って一蹴されるかなと思ってたんだけど。









「……嫌だったら悪いか」











憮然とした表情でじろりと睨まれて、胸がきゅんとした。
















たとえ構ってくれなくても。


―――――――




「……やっぱりユリウスが好き」




「! ……わ、私もお前が好きだ」




end
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