アリス夢
□構う大切さ
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「なぁ、それって楽しいのか?」
かわいく小首を傾げて尋ねられて私はふと自分の目の前に座る男を見た。
楽しくもなさそうに壊れた時計を直す恋人。
「ユリウスは時計を直してばっかだし、名無しさんってばずっと本を読んでるじゃないか? それって楽しい?」
「……」
「楽しいかって聞かれたら……すごく楽しいってわけでもないけど」
答える気のなさそうな恋人に代わって、困りつつエースに返した。
「お互い一緒にいるのにずっと別行動じゃないか」
不思議そうな顔のエースに苦笑する。
「まぁね」
「それって楽しい? ユリウスって名無しさんのこと構わないの? まあいちゃいちゃしてるユリウスも気持ち悪いんだけどさ、はは!」
「…そろそろ黙れ、エース」
「たまに構ってくれる、よ? それが嬉しくもあり楽しみでもあるんだけど」
口に出してからしまったと思う。
楽しみ、だなんてやっぱり普段楽しくないみたいじゃないか。
「名無しさんってば健気だよな。こんな仕事人間が暇になるまで待った挙句にちょっと構っただけで嬉しいだなんて。いい彼女だよなー。放っておいたらいつか他の奴にかっさらわれちまうぜ、ユリウス!」
「黙れ! さっさと仕事をしに帰れ!」
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