遙か夢伍

□華たおやかに
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行き倒れていた私を拾ってくれたのは桜智さんだった。

どうせ寝に帰るだけだから、と一緒に住むことを許してくれた彼に感謝と共に好意を抱くのにさして時間はかからず。でも桜智さんにはいずれゆきちゃんが現れるのだから、と自制していた。




好きになっても辛いだけだから、と。





何も望まず与えたい。返したい。



















「今、帰ったよ」





「あ、おかえりなさい! 夕餉はどうします?」




「・・・・・・食べてないよ」



「じゃあ温めますね!」



そんな風なやりとりが出来ることが嬉しくて。




でも、最近ね。





辛くてどうしようもないことがあるの。






「天女のような子なんだ・・・・・・ううん、雪の精かな・・・・・・とにかく清らかで、とてもかわいらしいんだ・・・・・・」





桜智さんは最近家に帰ってくるとうっとりとした顔で私に向けてゆきちゃんの話を聞かせてくれる。




見た目は華やかで女遊びに長けていそうな彼だけど、内面はひどく純粋で一途だと知っている。



彼の話は時折彼女の武勇伝もはさみ、彼女がいかに凛として美しいのか、普段はいかにかわいらしいのか、清らかなのか、その照れた顔が愛くるしいかを教えてくれる。





私は笑顔でそれを聞くのだけれど・・・・・・知ってますか、桜智さん? 私は・・・・・・それが辛くて仕方がないんです。






不毛な恋に溺れたくはない、と。





望まず与えてもらった恩を返したい、と。





ただ家政婦のようであればいいのだ、と。







―――――わかっているのに限界なんです。


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