遙か夢伍
□譲れない
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「こんなところにいたのかい」
「え…」
庭園でぼうっとしていたときにかけられた声に私はきょとんとした。
「友雅さん…」
掠れたつぶやきが口から漏れた。
蘭さんは?とか、天真くんは?とか尋ねたかったけれど友雅さんが追いかけて来てくれたらしいことに気づいて現金にも気持ちが浮上した。
さっきまでなんとなく凹んでいたのに。
「どうしたんですか?」
「いや、聞きたいことがあってね」
「聞きたいこと? 私にですか?」
「ああ。君は天真のことをどう思っているんだろうと思ってね」
「え?」
小首を傾げて扇子を手にぽんっと打ち付けて聞いてきた友雅さんにはてなマークが頭の上に三つくらい飛び出した。
「??? えーと・・・・・・すごくいい子だと思います・・・・・・お兄ちゃんみたいな感じで、大切な友達だと・・・・・・思います?」
はたしてこの返答が正しいのかどうかと思いながら答えた私に友雅さんは満足そうに笑みを深めた。
「なるほど。よくわかったよ」
「はぁ……それがどう…」
「では私に脈はあるのだろうか」
「・・・・・・へ?」
脈? 脈ってなに?
さらにはてなマークだからけになった私に友雅さんはすっとかがんで顔を近づけた。
一気に距離がちぢまった綺麗な顔にびくりと身を竦ませると、友雅さんはにっこりと微笑みを見せた。
「私は君のことを好ましく思っているが君はどうなのだろうか?」
「は・・・・・・」
この、ましく?
好ましく?
一気に熱くなった頬に戸惑っていたら友雅さんはのどの奥でくすくすと笑って私の頭をそっと撫でた。
「――――好きだよ」
2013/06/12