遙か夢伍
□譲れない
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天真くんや詩紋くんやあかねと一緒にこの世界に来て、私はこの人に恋をした。
気だるげな印象を持たせる、色男。
浮名を流す彼の一番になりたいだなんて夢物語を夢見ているんだ。
ダメ元だって分かってるから、余計大胆に彼の好みを聞こうなんて思えたんだと思う。
「友雅さんの好みの女性ってどんな人ですか?」
「私の?」
ほんの少し面喰った顔をした友雅さんは次第に笑みを作って扇子で口元を隠した。
「そうだね・・・・・・どんな女性にもそれぞれ魅力はあるものだが、私の好みだろう? 私は・・・・・・可愛らしい子が好きだね。最近分かったことだが」
「…あかねみたいな、ですか?」
「神子殿?」
「よく構っているから…それに八葉のみなさんはあかねに惹かれているみたいだし」
「・・・・・・神子殿は綺麗すぎる。人であるのかどうか、生身の娘なのかどうかを時折確かめたくなるのだよ」
そう私に向かって嘯いた友雅さんに首を傾げながら、私は最近の八葉たちの動向を考えた。
みんな、あかねに心惹かれてる。
もしかすると神子と八葉の絆がそう仕向けてるんじゃないかって、いつかまでは思ってた。でもすぐに・・・・・・そんなに単純なものじゃないって気づいた。感情はそんな簡単なものじゃない、って。
「・・・・・・鷹通さんまで参戦ですもんね。天真くんはもともとだし」
「天真。天真、ね。さてどうだろうか」
「え?」
扇で口元をふわりと隠して友雅さんは目元をきゅっと笑みに細めた。
「敵に塩を送るのは好きではないのでね。それ以上は言わないが……」
その言葉の先を察知して暗い顔になりそうなのを知られないようにと俯く。
そんな私の頬に手をあてて、友雅さんは私の唇を親指でするりと撫でた。
「何故暗い顔をするんだろうね。ん?」
艶やかな笑みを浮かべた友雅さんに胸がきゅっと掴まれるような心地に陥った。
「あ、の…」
「友雅さん」
「おや、これは…蘭殿に天真じゃないか」
「…よう」
笑顔の蘭さんと仏頂面の天真くんに私は小さくため息を吐き出した。
―――――ここにもライバルがいたんだった…。
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