遙か四
□実は最初から
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「お嬢!」
元気な声が聞こえたなぁ、と思ったその瞬間背後からぎゅううううっと抱きしめられて私は目を白黒させながらおかしな悲鳴を上げてしまった。
「ひょぇえええ!?」
きゅっと肩を竦めても私を抱き締めている腕は離れずちょうど顔の前に筋の浮いた逞しい腕が見えて、背中から伝わってくる温かさにもどうしていいのか分からなくなってしまって私は前に前にと逃げようとした。
「ちょ、ちょ!」
「お嬢! やっと会えた!」
「ひ、人違いですぅっ!?」
離れない腕をぱしぱし叩いて訴えるとその人は私の顔を覗き込んで首を傾げた。
「お嬢、じゃないのか? こんなに似てるのに?」
怪訝そうな顔でむぅっと顔を顰めるその人に私は身を竦めながら叫びをあげた。
「違いますぅ! あのとりあえず腕離してくださ〜い……っ!」
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