遙か四
□からかいすぎた後悔と
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目に見えて凹んだ様子の名無しさんに内心苦笑する。
――――かわいいやつ。
幼馴染という枠に入ってる望美は確かに存在として別格だ。
そう言う意味だがこいつは完全に勘違いして凹んでる。
俺ってサドっ気あったのか? 名無しさんの泣きそうな顔がかわいくて愛しくて仕方がない。
好きな奴苛めて喜ぶなんてまるで小学生みたいだけど、名無しさんをからかうのが楽しくてやめられない。
「長年一緒にいるだけあって俺の好みもばっちりだし、やっぱ望美みたいなやつが…」
「・・・・・・」
言いながら名無しさんの顔をうかがって俺はぎょっとした。
「おい、なんで泣くんだ…っ!?」
慌てて団子を置いて名無しさんの頬に手を寄せると名無しさんは嫌々するように首を横に振った。
「な、でも、な…っ」
きゅっと眉を寄せて辛そうに涙を溢れさせる名無しさんに罪悪感がひたひたと押し寄せる。
――――やりすぎた。
「わ、悪い。悪かった。嘘だ、俺は別に望美が好きなわけじゃない。幼馴染としては大切だし特別だし別格だけど……キスしたいとか抱きしめたいとかは思わない……!」
我ながらなんて弁解の仕方だと情けなさに舌打ちしたくなったけれど、それだけ自分も混乱してるんだって分かって嗚咽を漏らす名無しさんを腕の中に抱きしめた。
「・・・・・・からかいすぎた。悪かったよ」
「な、んで…」
「うん?」
出来るだけ優しく問い返すと名無しさんは小さな声で恥ずかしそうに尋ねてきた。
「なんで、抱き締めたり、するの・・・・・・?」
「・・・・・・好きだからに決まってるだろ」
(ミイラ取りがミイラになる)
真っ赤に染まったその耳たぶが愛しくて思わずキスを落とした。
2013/05/29