遙か四

□ゆっくりと距離をつめ…
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「名無しさん、景色が素晴らしいところがあるんだ。一緒に行こう」






「え…」




「さ、早く」




「っ」





突然のヒノエの誘いに私を含めて周りもぽかんとする中、ヒノエは私の腕を掴んで引き寄せた。


人との触れ合いに思わずびくりと肩を震わせたもののヒノエは笑みを深めただけでそれに対して何も言わなかった。



・・・・・・よかった、何も流れてこない・・・・・・。



ヒノエが何を考えているか流れてこなかったことにほっとする。


でも、今は彼が何を考えているか不可解だからいっそ流れてきた方がよかったのだろうかとも思った。



そんなことを考えているうちにヒノエはさっさと私の腕を掴んだまま歩き出していて私は慌てて彼の後を追った。













あの日からヒノエは今までの無関心なんてなかったように私の手を引きどこかしこへと連れだってくれる。



最初は何かたくらみでもあるのかなと疑って思ってたんだけど、次第にその笑顔に何の含みのないことに気づいて純粋に連れだってくれているんだなと思って嬉しくなった。嬉しく思う自分に戸惑いもしたけれど。










「あはは、それ本当? ヒノエくんってばもう…」



「おかしいだろ? あの時は本当に焦ってね」



「ヒノエくんでも焦るんだ?」



「もちろんさ」






「・・・・・・」





縁側で神子とヒノエが談笑してる。



私はくるりと踵を返した。




「あれ、名無しさん? どこに行くんだい? 一緒に…」




「っ」




私を引きとめたヒノエの声に胸が痛くなった。




――――一緒になんて、いたくない。





この気持ち、嫌だ・・・・・・こんな、嫉妬みたいな気持ち、嫌だ……っ!







「・・・・・・いい」




たった一言そう返して走り出す。





「名無しさん!?」





早く。



一刻も早くこの場を離れたかった。


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