遙か四

□私の猫
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飛行機が落ちる重力に恐怖を感じながら必死に何かに掴まったことは覚えている。



でも……まさかこんなおかしなことになるなんてどうして予想できただろうか。














「・・・・・・あれ?」



気づけば私は上半身裸の男性に腕を掴みあげられて、全身びしょぬれになっていた。というか、下半身が温かい・・・・・・?




「お、風呂…?」



「まぁ、そうだね。それで? 君はどうしてこんなところにいるの?」



艶やかな声に、あれすごくいい声だ、と思いながら恐る恐る顔をあげて・・・・・・目をぱちぱちと瞬いた。
切れ長の目に、すっきりした鼻梁。整った顔立ちに濡れた髪が張り付いて異様な色気を醸し出している。

ていうか、なんで上半身裸?



あ、そうか、ここお風呂なんだ……って?!




「きゃああああ! 変態変態へんたいっ!」



「っ、暴れないでくれる? 丸腰とはいえ、こっちも男なんだから、力だけで勝てるわけないでしょ」



呆れた声でその男性はそう言うと私の腰を抱きかかえた。



「!!?」




しなやかな筋肉のついた腕に抱きしめられて密着した体に一気に羞恥心がこみ上げた。





「やっ!? やぁ……っ!」




片腕で腰を抱きかかえたまま、もう片方の手が私の体を這いまわる。

それが恥ずかしくて・・・・・・でも恥ずかしいだけじゃなくて変な気持にもさせられて、目の前が真っ赤になった。




「ん…刺客の選ぶ場面にしては順当だと思ったけど、君、訓練も何もされてないね。もう一度聞くけど、どうしてここに?」




「っ」



体を這いまわる手が止まったと思ったらすいと顎をすくい上げられて緑の瞳に見つめられた。




「あ、の…」










「まぁいいか。後で聞くよ。そろそろ湯冷めしそうだし」




ひょい、と肩に抱き上げられた。


この人細いと思ってたけどすごく力があるよ!? なんで!?





「お、降ろしてください! 降ろして……っ」




「大人しくしていなさい」



ぺちりと剥き出しの太ももを叩かれて背筋が跳ねた。
結局抵抗しきれずに大人しく抱き上げられた体勢に収まろうとして・・・・・・ぎゅっと目をつむる。



「やっと静かになったね」




だ、だって……っ!

そんな満足そうな声を出されたって……っ!




綺麗な広い背中の下に、引き締まった・・・・・・・・・・・・お、お尻と長い足が見えて…………っ!



ぎゅうぎゅう目をつむってその残像を消そうと思うのに、忘れようとすれば忘れようとするほど、その映像が頭にしみついて離れなくて恥ずかしかった。
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