遙か四
□好意の証
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「まぁくん」
彼女の表情が動くのを見たのはそれが初めてだった。
将臣を見つけたと同時に、普段喜怒哀楽が抜け落ちたような彼女のだったのに確かに驚きと安心と嬉しさがないまぜになった色を顔に乗せたんだ。
「お、名無しさんもいるじゃねぇか。なんだ、そんなに驚いた顔して」
「・・・・・・まぁくん、老けた」
「男前が上がっただろ?」
「ん…」
こく、と頷く彼女を将臣はひどく優しい目で見つめくしゃくしゃとその頭を撫でまわした。
「無事で、何よりだ」
「まぁくんだって」
そう言葉を返す彼女の表情は確かに感情を宿していて、俺はそこで初めて彼女に感情があることが分かったんだ。
それは当たり前なのに、驚くほど意外なことで、そう感じる自分がおかしいんだということに気づいてなんとなくばつの悪い思いをした。
それから俺は、彼女のことを注意深く観察するようになったんだ。
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