遙か四

□繰り返す
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「リズ先生。私、九郎さんのこと・・・・・・」




私が愛し、私だけを愛していると思っていたその養い子は、九郎と惹かれあった。





「・・・・・・何故だ」




声低く尋ねた私に彼女は初めて怯えた顔を見せた。



「お前の莫大な霊力を抑えきれるのは、鬼である私しかいない」



「九郎さんは、考えようって言ってくれたの。ちゃんと制御できるようになろうって。二人なら、きっと出来るって……っ!」




必死な様子で言い募る彼女を壁際まで追い込み、顔の両側にダンッと拳を降ろした。

恐怖に引きつったその顔を見下ろして、私はもう一度言い聞かせた。



「お前には私しかいない」



唸るようにそう言った私を見上げて、彼女はふるふると首を横に振った。まなじりに涙を溜めて、首を、横に。






―――――そうか。






その真珠のように煌く涙を見て、その涙を自分だけのものにしたいと思った。


だが今の彼女の心は私に向いていない。


ならば…。

















「り、ず・・・・・・せんせ・・・・・・」






ただでさえ大きな目が見開かれてその瞳に私の姿を映す。






私を映したまま光を失くした目を見下ろして、まだ体温を宿したままの体を抱きしめた。




「・・・・・・これもまた、運命だ」




だらりと力なく垂れた手を持ち上げて頬に押し付ける。





「お前は私だけのものだ。他の誰にも、渡さない・・・・・・」




その体から流れ出る血潮の熱さを感じながら、剣を払って懐に収める。





「・・・・・・もう一度やり直そう。お前が私だけしかその目に宿さないように」




逆鱗を取り出してそれに口づける。






「何度だって・・・・・・私とお前が惹かれあう運命に行きつくまで、何度も何度でもやり直そう」









その部屋の中には応とも否とも答えるものはおらず、すぐに白い光と共に人の気配がなくなった。






―――――何度でも繰り返そう。






――――――お前は私だけのものなのだから。





2013/05/08

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