遙か四
□不器用すぎる恋物語
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「たぁああああ!」
剣を繰り出して目の前の怨霊を倒すべく戦っていた。
それなのに気づけば私は頭を誰かに抱えられ、庇われていた。
――――え?
一体今何が起こったんだろう。
そう不思議に思った私を頼久さんの声が怒鳴りつけた。
「馬鹿もの! 前に出るな! ケガをしたらどうする!?」
渋面の頼久さんが心配を滲ませた顔でそう言ってくれているのが分かって私は少し言いよどんだ。
「だ、だって……怨霊と戦わないと・・・・・・それに怪我したってどうってことな・・・・・・」
「お前は女だろう! 顔に傷でも出来たらどうするつもりなんだ!!」
「……っ」
なんの含みもないその言葉に、ボンッと顔が一気に熱くなるのがわかった。
「ご、ごめんなさい…」
そしてさらにうっかり素直に返事をしてしまう。
「分かればいい。なるだけ前には出るな。わかったな?」
くしゃりと髪を撫でる武骨な手。
満足そうに微笑んだその顔に、私は心臓がばくばくと高鳴りだしたのを感じていた。
―――――ちょ、治まれ私の胸!
そんなに大きくないのにどうして高鳴る!?
わけのわからない突っ込みを自分自身で入れながら、私は含みなく女性扱いされたことにどれほど自分が喜んでいるかを自覚して恥ずかしくなった。
ううん違う。
・・・・・・頼久さんに女扱いされたから嬉しかったんだ。
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