遙か四

□さくらいろ
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「・・・・・・」



「チナミくん、名無しさんのことが気になる?」



顔を覗き込みそう尋ねてきた蓮水にオレは頬を赤く染めた。




「そういうわけでは…」



蓮水の妹の名無しさんは、今日は風邪で宿に残ったままだ。
大分調子がよくなったとは言っていたが……。


言葉を濁したもののやはり心配で、茶化す様子のない蓮水にこくりと頷いた。



「・・・・・・そう、だな。やはり心配だ」


素直に頷いた俺に嬉しそうにして、


「よかった。チナミくんなら面倒見もいいし名無しさんのこと安心して任せられるね」



と言ってそれはどういう意味なんだと問う間もなく蓮水は桐生たちがいる方へと走って行った。




「・・・・・・蓮水のことだ、他意はないのだろうな」



ともすれば名無しさんを任せたと言わんばかりの台詞だが、蓮水に限って含みはないに違いない。




「ん・・・・・・?」



後を追おうと顔を上げたその時、露店に並べられた髪飾りに目がいった。



桜色の簪。
小さな花を散りばめた華やかなそれは名無しさんに似合いそうだと思った。




「・・・・・・店主」



「はいはい。何をご所望で?」



「この、簪を」


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