遙か四

□迎えに
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「な、何よその恰好!?」



「げ」



「げってなに・・・・・・っていうか本当に将臣よね? 従兄弟とかじゃないよね?」



「あー、残念だが・・・・・・本物なんだよなぁこれが。話せば長いから話さねぇけど」


しまった、という顔をしてから困ったように笑った将臣にむかついてその肩をがしりと殴った。



「いてぇ!」



「わけわかんないし! その面倒だからって話省く癖直してよ!」



「いや無理」



「もおおおお!」



胸倉をつかんで前後に揺さぶる。
将臣はされるがままに揺らされて、ふと私の両手を掴んだ。



「言う気になった!?」



「いや・・・・・・相変わらずだな」



「・・・・・・相変わらずがさつだって?」



「相変わらずお前だなって」



なんだか感慨深そうにそう言って目を細めた将臣に変な感じがして私は口を尖らせた。




「何よ・・・・・・昨日会ったばかりなのに変なこと言うんだから」



「昨日・・・・・・そうか、昨日か」




「? その髪って本物? ヅラ?」



「だからいてぇよ!」


「あ、本物だ」


「将臣くーん! もう、どっか行っちゃうから驚いたじゃない」



スーパーから出てきた一行の中、女の子があげた声に私は自分の眉間にしわがよるのが分かった。



「おう、悪いな。買い物はお前たちに任せたら大丈夫かと思ったんだよ」


「もう! って、あれ? 名無しさん!? え、ちょ、将臣くん……っ!」



軽く肩を竦めた将臣に対して口をとがらせた春日さんがふっと私を見てすごく焦った顔をした。
そして将臣の腕を引いて小さな声で「会っちゃって大丈夫なの?」なんて聞くから余計に腹が立って。



「こいつは大丈夫だ」



将臣も将臣で笑って頷くから。

いつもそう。

将臣の彼女は私のはずなのに、いつも彼女に負けている気がする。


いつも。

いつだって不愉快な気分になるんだ。

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