遙か四
□家路
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「はい、どうぞ」
「ああ。有難く」
器を受け取りながら、彼女の様子を観察する。
なんてことのない娘だ。
けれども、この家で傷を癒す期間が長くなれば長くなるほどささくれた心も癒されるような心地がする。
「・・・・・・美味い」
「ありがとうございます」
しみじみと美味いと言えば、彼女は毎度食事のたびに言われている言葉といえども本当に嬉しそうに礼を言う。
そんな様がかわいらしく愛おしい。
・・・・・・こんな風に思ってはいけないのに。
俺はじきにここを離れるのに。
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