遙か四

□運命という名の引力10
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山中で再会した景時さんの治療を済ませると、景時さんの長い指が私の頬をなぞった。




「・・・・・・好きだよ、って言われてるみたいな触り方ですね」



くす、と笑うと景時さんも頬を緩めた。




「・・・・・・言ってるよ。君に言葉にして伝えられたら一番いいんだけどさ、出来ないから。だから……仕種で、視線で、伝えてるんだ。……伝わってる?」




こつりと額が合わさって、鼻先が触れ合う。




「伝わってます。とっても・・・・・・とっても伝わってきます。私も、伝わってますか?」



「・・・・・・うん」




離れていた時を埋めるかのように。





愛していると伝えるかのように。





「・・・・・・」





「本当は君を連れて逃げてしまいたい。でも逃げたらきっとオレは君に謝り続けてしまう。こんな、追われるだけの生活をさせてごめん、って。オレは・・・・・・君と笑って過ごしていきたい」





その真っ直ぐな瞳に私は笑顔で頷いた。





信じるって決めた。






だから、揺らがない。





本心は引きとめたい。




でも引きとめることは解決策にはならないから。







「諦めることにも疲れた。運命を決めるのはオレの心だと思うから・・・・・・オレは、抗うよ。正直、君を迎えに行こうと心に決めていても心が折れそうになることがたくさんあったんだけど……でも」




きゅっと景時さんの手を握りこむと、彼も握り返してくれた。




「君がオレのことをまだ好きでいてくれてるって、愛してくれてるって分かったから。オレは、まだ頑張れる」






力強くそう言いきった景時さんがごそごそと懐を探った。




「これ、持っていてくれるかな?」




「なんですか?」



渡されたそれは固くて冷たい手触りで、装飾品の様な飾りが彫られていた。



「梅・・・・・・?」



「うん。なんていうか、オレってつくづく一人だと何もすることないんだな〜って思ったんだけど。君を想って作ったんだ。薬入れに使ってくれてもいいし、ちょっと見づらいかもしれないけど鏡として使ってくれてもいいから持っててほしいなって」



鉄製なんだけど、と照れ臭そうに笑った景時さんに嬉しくなって私はその梅模様の薬入れをぎゅと胸元に抱きこんだ。




「・・・・・・嬉しい。大切にします。肌身離さず持ってますね」



「うん。ね、これ」



「香袋…私があげた…?」



「・・・・・・寂しくてたまらなくなったとき、これを見ていつも心を慰めてた。君がオレの支えなんだ」




「景時さん…」



「待ってて。絶対、今度こそ絶対・・・・・・迎えに来るから」




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