遙か四
□運命という名の引力7
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雪が降り積もった庭を眺めていると背後からきゅっと抱きしめられて頬が綻んだ。
「おかえりなさい」
「うん、ただいま。・・・・・・寒いのにこんなところでどうしたの?」
温もりを分け与えるかのようにする景時さんの腕に手を添えて私は庭を見つめたまま返事をした。
「寒いですね。でも、寒いと身が引きしまる気がして、こういう空気好きなんです。朝は起き辛いんですけど」
「冬って空気も澄んでるし背筋がのびるよね。ずいぶん冷えてるけど、大丈夫?」
気遣わしげにそう言って抱きなおしてくれた腕の強さが愛しい。
「今すごくあったかいです」
「ほんと? そうなら、よかったよ」
少し照れたように笑った景時さんを見て、もう一度庭に視線を戻した。
「もうすぐ春ですね。雪ももうそろそろ溶けてきそう」
「そうだね。最後の雪、って感じかな〜」
二人触れ合うことが多くなった。
それは幸せだなぁと実感できる時間で。
「そういえばさ、オレ梅の花が好きなんだよね〜」
「そうなんですか? もうすぐ咲きますね」
「うん。だから、一緒に見ようね」
「はい」
雪の積もる庭に青い新芽が出てきているのを見て二人で和む。
それが普通で。
幸せで。
私はきっとこの先もこの人とずっと一緒にいるんだろう。
そう、信じて疑わずに思っていた。
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