遙か四
□運命という名の引力6
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景時さんの腕の中で目覚めた朝、景時さんの妹さんの朔さんが帰ってきた。
近づいたと思った距離は一気に離れ・・・・・・景時さんは、家を空けることが多くなった。
「兄上ったら・・・・・・あなたがここに来た日からずっとこんな調子だったの? そうだとしたら気の付かない兄でごめんなさい」
「あ、いえ・・・・・・前までは、早く帰ってきて下さってました。気を、遣ってくれていたのだと」
今になってわかる。
彼に気を遣われていた。
今までの生活を変えるほど。
「あらそれが普通よ。じゃあ今が忙しいのね…同じ女性とはいえ突然見知らぬ女の人と一緒に置いていかれたのでは、名無しさんも気を遣うでしょうに…」
困った兄上、と頬に手を当てため息をつく朔さんに私は慌てて笑顔を作ろうとして・・・・・・失敗した。
景時さんはあの夜を一時の気の迷いだと後悔しているのだろうか。
だから頻繁に家を空けるようになったのか。
そうなのだとしたら・・・・・・なおさら居たたまれない。
「名無しさん? どうかした?」
「・・・・・・いいえ、何もないの」
真夜中に起きてももう縁側にあの広い背中は見えない。
それがひどく寂しく、切なく、哀しかった。
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