遙か四
□運命という名の引力5
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いつ、だっただろう。
その背中がいつもそこにあることに気づいたのは。
ふとある日真夜中に目が覚めてぼんやりとした視界の中庭を見ると、縁側に影が見えて。
目を凝らすと板戸に半分背中を預けた景時さんだと気づいた。
それから毎夜確かめるように薄目を開けるようになって。
景時さんはぶれることなく毎晩その場所で私の様子を見守ってくれているようだった。
一瞬見張っているのかとも思ったけれど、見張っているのか見守っているのかは様子を見ればわかる。
彼は常に、私の様子に気を遣ってくれていた。
見守るように、優しく。
怯える心が歩みだすのを躊躇って振り向くと、必ず景時さんが優しく背中を支えてくれている。
その存在にずいぶん励まされた。
毎晩私に付き添ってくれているというのに、景時さんは疲れた様子や眠そうな様子を一切見せず。
それにもまた尊敬して、どこまでも優しい人だと思った。
けれど。
どうしていつもそこにいてくれるのか。
同情なのか。
それとも・・・・・・。
手を伸ばせば届くけれど、手を伸ばしたが最後、関係性が変わってしまう。
臆病な私はそれが怖くて、いつも布団の下から彼のその背中を眺めるしかなくて。
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