遙か四
□胸の奥に咲く切なさの花
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友雅さんが好き。
この世界に来て彼らに会ってからその想いだけは揺るぎないもので。
でも彼が束縛を嫌い、涙を嫌うと知っている。
だから寂しいとももっと一緒にいたい、とも言うことが出来なくて・・・・・・他の女性と戯れる友雅さんのことを咎めることも出来ず、見ているしかできない。切ないけれど・・・・・・でもみっともなく引き止めたら、愛想をつかされてそこで終わりになってしまうだろうから。
そもそもどうして私の誘いに頷いてくれたのかはわからない。
物珍しかったのか。
それとも・・・・・・それとも。
「何を、考えているんだい?」
「・・・・・・月が、綺麗だなって」
横合いから頬を撫でられて笑みを返しつつ、まさか「今日は来てくれたのね・・・・・・じゃあ昨日は誰のところに?」と思っていたなんて言えず、私は視線を落とした。
「君の方が、よほど綺麗だ・・・・・・」
低く深い綺麗な声がそう言って優しく唇を奪われる。
小鳥のように啄む唇に、胸が高鳴った。
・・・・・・好き。
すごく好き。
口づけられるだけで涙が出そうなくらい、好き。
友雅さんは面と向かっていたらやっぱりとても優しく接してくれる。
愛されている、と思わせてくれる。
口づけも優しいし、贈り物だって欠かさずしてくれる。
抱き締める腕も、かける言葉も、すべて。
「・・・・・・愛しい姫、私を今宵君の虜にしてくれないか?」
時折甘える仕種をする彼が愛しいの。
―――でも。
私が甘えてしまったら、縛ってしまったら、全てが終わってしまう気がする。
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