遙か四

□花筏
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「花筏(はないかだ)だね」




川を見下ろしてそう言うと、腕の中の少女が不思議そうに私を見上げた。




「花筏って?」




「花筏とはね、川の水面に桜の花が舞い降りて筏が川を下るかのように流れていく様を言うのだよ。風情があるだろう? 春の風景だ」



「へぇ……」




きらきらとした笑顔で川を見下ろす少女に向かって笑みを向ける。





――――まだ固い蕾であるこの少女が、私の手によって知識を得、艶を得、徐々に花開いていく。




それは思った以上に私を満足させた。




「四季折々の美しさがあるからね。また夏に来よう。次は秋、その次は冬」



「また連れてきてくれるんですか?」



ぱっと嬉しそうに笑みを浮かべて私を見上げる少女の手を取ってその指先に口づける。



「・・・・・・ああ。もちろん。だから君も、どこにも行ってはいけないよ? ずっとずっとどこにも帰ることなく・・・・・・私の傍に」



(切実なるその願い)


2013/01/25

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