遙か四
□幼いころの約束を
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朝、金を散歩をしていたら突然金が「わんっわんっ」と尻尾を振って吠え始めた。
それが何度も続いてさすがに私がなだめるようにその頭を撫でて尋ねると。
「金? 何を吠えて・・・・・・」
がさ。
音を鳴らして姿を現したその人に、息が止まるほど驚いた。
「名無しさん、か?」
尋ねる声は記憶のものよりずいぶん低く。
顔立ちは精悍に、体つきは男らしく、前よりも長くなった髪と伸びた背丈、そして堂々とした態度に胸が高鳴った。
「九郎…」
ああ、ものすごく変わった。
「久し振りだな!」
にか、と笑った笑顔はひどく幼く。
ああ、変わっていない、とその変わりのなさに泣きたくなるほど安堵した。
「く…」
九郎、と呼びかけて近よるつもりだったのに。
「九郎さん!」
先に彼の名前を呼んだ女の子の声。
「望美、どうした?」
「どうしたもこうしたも! 突然先先歩いていくから驚いたじゃないですかっ」
「ああ、すまんすまん。懐かしい声がしたものでな」
「声?」
「ああ。金だ」
九郎の隣に立つ紫苑の髪の可愛い女の子。
仲のよさそうな二人に胸がどきどきした。
さっきとは違う風に、どきどきした。
彼女は、成長した私とは比べ物にならないほどに綺麗で可愛らしい。
負けた、と自分の中の女の部分がひどく悔しく呟いた。
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