乙女ゲーム夢4
□乙女ゲームリク
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「ただいま帰りました」
そう言って襖を開けた九寿の姿を見た瞬間、私はぱっと笑顔を浮かべて布団から身を起こした。
「お帰りなさいませ、九寿」
私の顔を見て小さく笑い、九寿が傍らに腰を落とした。
いつ見ても姿勢の良い姿に見惚れてしまっていると九寿は私の頬を指の背でそっと撫でて声を潜めた。
「・・・・・・違う呼び方を教えたでしょう?」
「!」
艶を帯びたその声に体が何かを期待してぴくりと跳ねた。
次第に頬も熱を上げて恥ずかしさから俯こうとしたのに両の頬を支えて視線を合わせられるともう逃げ場がなかった。
「だ・・・・・・旦那様・・・・・・」
「よく出来ましたね」
「・・・・・・久し振りに帰ったのに、いじわる」
「離れていたから余計にあなたが恋しいのですよ」
拗ねてじろりと見上げると九寿はおかしそうに喉の奥で笑って軽く唇を触れさせた。
「ん…」
久し振りの口づけに胸が甘い痛みを覚える。
まさかこんな関係になれるだなんてつい最近まで思いもしなかったのに。
彼にとって自分が恋愛の対象になれるだなんて・・・・・・。
「んっ、んぅ・・・・・・っ」
触れるだけ、と思っていた口づけだったのに次第に深く深くなっていって離れたときには息が荒かった。
「は・・・・・・はぁ……」
くたりと力の抜けた体を九寿に預けるとしっかり抱きとめてくれた九寿が私の耳元で囁いた。
「体調は?」
「え、と・・・・・・大丈夫、です・・・・・・」
「では離れていた分たっぷりと可愛がって差し上げますよ、私だけの姫・・・・・・」
「んぅッ」
離れていなくても可愛がってくれるくせに。
そんな憎まれ口は再びに口づけに消えていってしまった。
(最愛の)
2013/10/01