乙女ゲーム夢4
□桜の花びらに導かれて
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翌朝。
腕の中で息を引き取った妻を抱き締めたまま、俺は庭へと視線を巡らせた。
迎えが、来たのだろうか・・・・・・?
微笑むように逝った名無しさんに笑みが漏れる。
「・・・・・・あんたとともに過ごせた時間、俺は幸せだった・・・・・・」
最期に幸せだったと言ってくれた。
本心だっただろう。
今わの際で嘘をつけるほど器用な女でないことは、過ごした年月の長さから学んだ。
「・・・・・・あんたが幸せだと言ってくれて・・・・・・俺も、救われた・・・・・・」
いろんなものを失った。
変わらぬものをこそ信じると、俺は言った。
お前は・・・・・・変わらず、土方さんを愛し続けた。
「だが…俺のことも、愛してくれた。そう、思ってもいいな?」
重みを増し、温かさを徐々に失う体に問いかける。
「・・・・・・先に逝かれては、俺に分が悪すぎます。副長」
副長は、彼女の心を。
俺は、彼女と過ごす時間を。
分かち合ったのだろう。
「・・・・・・今度は俺の番か」
彼岸には、懐かしの面々が揃っていることだろう。
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