乙女ゲーム夢4

□桜の花びらに導かれて
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桜を見るたびに思い出す。





それは、私の魂に刻みつけられた戒めともいうように。







「・・・・・・今年も桜が咲いた。土方さん・・・・・・」




生まれてから23年。





ずっとずっと、私はあの人の想い出と共に生きている。






















――――――あの人が戦死したのち、一さんと共に生涯を過ごした。





心の全てをあげられなかった私を責めることなく傍に居つづけてくれた優しい人を置いて行ってしまうことに私は胸を痛めたけれど、やっと土方さんの下へ行けるのだという安堵も覚えた。




呼吸の浅い私の傍らに一さんが正座をした。




「・・・・・・死ぬということは、先に逝ってしまった大切な人たちに会いに行くことだとも言うそうだ」




しわくちゃの私の手を、骨ばった一さんの手が包み込む。




歳と共にしわを刻んだ目元をふっと和ませて、一さんが私の目元をそっと覆った。





「副長に、よろしく頼む。俺もそんなに遅くならず、追いかけます、と」





「はじ…」





「また顔を合わせたその時、今度こそ正々堂々と勝負がしたいと伝えてくれ」




「・・・・・・」



何を言いだすのだろう。




唇が震えて、うまく言葉が出てこない。




ただ、一さんの手のひらを私の涙が濡らしていくのを感じた。





「・・・・・・俺はお前と共に過ごせて、幸せだった。幸せとはこういうものかと知った。子をもうけ、孫が出来、みなに囲まれて・・・・・・」




ぎゅうっともうあまり力の入らない手で一さんの手を握る。



大きな手。




私を今まで支えてきてくれた手。





それなのに、なんて私は薄情・・・・・・。





「……っ」




嗚咽がこみ上げる。



でも一さんの声は優しく穏やかなまま、乱れない。




まぶたを覆っていた手が外され、そっと目を開くと温かなまなざしが私を捉えた。





「・・・・・・お前は、幸せだっただろうか?」





「……っ! 幸せだった・・・・・・あなたに支えてもらって、みんなに囲まれて……っ! 幸せだった……っ!」




どうして私はこんな優しい人を心から愛せなかったのだろう。


いいえ、愛していた。愛している。確かに大切だった。



でも、心の全てが一さんのものだとは口が裂けても言えない。





―――――生まれ変わってもあなたと共にありたいとは、言えない。




そこまで、裏切れない。






泣きじゃくる私の背中を優しくたたき、一さんが私の唇に接吻を落とした。





「・・・・・・よかった。俺は副長との約束を、果たせたな」




遺恨などない、ほっとしたような嬉しげな声に土方さんの声が蘇った。







『斎藤と幸せになれよ』







いつまでも色鮮やかに蘇る、桜のような人。






「一さん・・・・・・」




「もう、休め・・・・・・」




歳を取っても力強い腕に抱かれて、私はそっと目を閉じる。


























まぶたの裏で、桜の花弁がはらりと舞った。





ひとつ。





ふたつ。




まばらに散る桜が吹雪のように数を増し暗闇を遊びやがて満開の桜の木が現れた。












薄桜鬼。











そう名付けられた鬼が、そこにいた―――――。


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