乙女ゲーム夢4
□狂気に満ちたしあわせを
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骨が軋むほど抱きしめられて、その痛みさえも彼の存在を感じさせるよすがで。
「好き、だよ・・・・・・もう千鶴も誰もいらない・・・・・・君がいればそれでいいんだ・・・・・・」
囁く声は甘い。
千鶴ちゃんと瓜二つ、女顔の彼が夜になると際限なく私を求めてくると知っているのは私だけだ。それが
ひどく私の優越感を煽った。
「私も好き・・・・・・好きだよ、薫くん」
鼻をくすぐるのは花の香りだろうか。
薫くんの、匂いだ。
「俺以外の誰も見ないで。他の男を目に映さないで。俺だけを見ていて」
「薫くんは生きて。死なないで。死ぬようなことをしないで。ずっと私と一緒にいて」
病的に繰り返される薫くんの懇願。
でもそれに負けず劣らず私もくるってる。
くるくるくるくる運命の輪は廻り。
―――――狂気に狂ったあなたが死ぬ運命を変えられるのなら、狂気に満ちたこの生活を甘受しましょう
。
私の言葉に薫くんは花開くように鮮やかに微笑んだ。
その顔も、私しか知らない。
「お安い御用さ・・・・・・俺はこの先ずっと君だけを見て生きていくよ。生きるも死ぬもずっと一緒だ・・・・・・
」
首筋に顔を埋めそう囁いた薫くんの背中に腕を回し、温かいことを確認する。
―――――あなたが生きてくれるのなら。
(狂気の運命と)
2013/06/06