乙女ゲーム夢4

□苛めっ子と苛められっ子の結末は
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「名無しさんちゃんこれも洗っておいて」



僕にびくつく彼女に手拭いを押し付けて「今洗って、急いでるんだ」なんてうそぶいたら彼女は渋々洗濯場に足を向けようとした。そして何気なく手拭いを開いて――――。





「きゃあああああ!」




手拭いを投げ捨てて逃げようとしたけど足下及ばずその場に尻もちをついた。






「あっはっは! その反応さいこーだね! やっぱり君って仕掛け甲斐があるよ!」





「おおおおおきたさ、沖田さんあれなに……っ!?」






お腹を抱えて笑う僕を見上げる彼女の目はもう泣きそうなほどに潤んでいて、ぞくぞくした。
その目に僕が支配欲が満たされるような感覚を抱いてるなんて知らないでしょ?





「えー? 自分で確かめてみなよ。ていうか僕の手拭い放り投げるなんて失礼だなぁ」





「そんなの無理に決まって……ぎゃああ!」




「屋台で売ってた虫の人形なんだー! けっこううまく出来てるでしょ? ね、触ってみなよほら!」




「追いかけてこないでぇえええっ!!」




慌てて立ち上がって半泣きになりながら本気で逃げる名無しさんちゃんを追いかけて僕は手の中のその人形を投げるべきか追いついて手に握らせるべきかはたまた着物の中に落とし込むかを考えた。




で、結局投げるわけにした。






「ほら受け取ってね!?」



「やだやだやだやだ投げないで……っ!」




後ろを気にして走っていたからか少しの段差に足を引っ掛けて名無しさんちゃんが上体を傾けた。
あ、まずい。

でもそう思うよりも先に手から人形が離れて名無しさんちゃんの顔目がけて落下して・・・・・・





「……っ!」





傍目に分かるほど怯えた名無しさんちゃんの腰を誰かが引き寄せその人形も持っていた槍で払い落とした。




「・・・・・・ったく、総司! 相変わらずしょうもないことでこいつ泣かしてんじゃねぇよ」
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