乙女ゲーム夢4
□君のうた
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「トキヤはトキヤの歌を歌えばいいんだよ」
必死だったんだ。
どうにかしてトキヤに「歌」を歌ってほしくて。
だってもったいないもの。
クールな顔をして情熱を秘めたトキヤが死んだような歌しか歌わないなんて、もったいないもの。
私は自分が書いた楽譜をトキヤに見せた。
私がパートナーだ。
だから私はトキヤの声が、歌が、引き立つような曲を作る。
だって私はトキヤが・・・・・・。
「・・・・・・安易ですね」
「ッ」
トキヤの眉間にしわが寄ったかと思えばトキヤは持っていた楽譜を机の上に投げ捨てた。
「曲が簡単すぎます。これではいい曲にはならない。もう少し真剣に曲を作ってください。君は私のパートナーでしょう。ならば私の力量を計ったうえで曲を作っていただかなければ困ります」
耳に冷たい声が降りかかる。
「作り直してください。・・・・・・これではAクラスの音也のパートナーの方が幾分マシですよ」
「……っ」
がん、と頭を固い棒で叩かれたような衝撃。
知ってた。
トキヤが一十木くんのパートナーを好ましく思っているのは知ってた。
でも、だからって。
「――――――ごめんね。すぐに作り直すよ」
内心を悟らせないようににっこりと微笑む。
自分のプリントやノートを集める手が震えているのが知れないように手早く身支度を整えた。
この場で泣かないのは私のなけなしのプライドだ。
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