乙女ゲーム夢4
□愛は不器用に
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「もう、勇様!」
「使用人ごときが俺に指図をするな!」
「だって今のは勇様が・・・っ」
そこまで聞いて私はしゃっとカーテンを引いた。
「名無しさん、ここに来て座ったらどうだ?」
「・・・玄一郎様、本日のご用向きはどのようなものでしょう?」
すっと老人を見つめると、貫禄を漂わせたその老人は厳しい目を私に向けた。
「勇とは、最近どうだ?」
「・・・・・・玄一郎様はご存知でしょうに」
「お前の口から聞きたいのだ」
口ひげをさすりながらそう言った玄一郎様をじっと見つめ、私はせいぜい皮肉に見えますようにと笑って見せた。
「勇様は新しい使用人に夢中のご様子。私は不要なようです」
この事実を自分の口から出すことがどれほどの苦痛を伴うか、全てわかったうえで言っているのだろうと思うと余計に腹が立つ。
「そうだな。よくわかっているじゃないか」
満足そうに頷いて、玄一郎様は予想の範囲内の命を私に下した。
「ではお前は今この時から、勇の婚約者ではなく正の婚約者になる」
「・・・・・・勇様と関係を持った私を正様が受け入れるとでも?」
「私の目を見くびるな。勇はお前に手など出していないだろう」
「・・・・・・」
全てを見透かしたような目。
同じ室内にいる加賀野を見ても目は合わず、私を助けてくれるものはこの場にいなかった。
「・・・・・・かしこまりました」
私にはそう頷くしか道はなかったのだ。
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