乙女ゲーム夢4

□宣戦布告
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私に斬りかかった人は沖田総司。助けてくれた人は近藤勇。横にいた綺麗な人は土方歳三という名前で。



新選組幹部に名を連ねる人たちに最初くらりとして、自分が時代トリップをしてしまったことに気づいたけれど帰るすべはなかった。


沖田さんは私を始末するべきだと言っていたけれど、結局近藤さんの温情によって私は賄係にしてもらえてこの屯所に置いてもらえるようになった。


基本的に幹部の人と交流することが多く、女の身ということで気遣ってもらえることも多かった私は次第に原田さんや藤堂さんや斎藤さんと打ち解けて・・・・・・土方さんも意外と優しいと分かってきたけれど、最初に味わった恐怖からか沖田さんへの苦手意識はどうしようもないほど消えてくれなかった。


目を合わせることすら怖いし……まともな会話も出来ない……。






「おーい、名無しさん! 団子食おうぜ」




「藤堂さん、お帰りなさい。ご無事で何よりです」



にぃっと笑って手に提げたお土産を見せてくれる藤堂さんに笑い返すと、彼はぷぅっと口を尖らせた。



「確かに俺は藤堂だけどさ、平助って呼んでくれていいって言ったじゃんか」



「うーん・・・・・・それはさすがにちょっと」



「ちぇっ」


「平助くん。そのお団子、僕が買ったんだけど?」



「っ」



「お、総司! 食おうぜー」



「食おうぜ、じゃないの。君が僕より先に声かけて持って行くって何事?って言ってるの」




藤堂さんの頭に腕を乗せて呆れた顔でそう言う沖田さんを見て私はびしりと固まってしまった。
どうしようもなく、どうしようもなく、苦手で仕方がない……っ!



「お、どうした、名無しさん?」




食おうぜ、団子。



そう言われて二人同時にこっちを見られたらもう頭の中はパニック状態だ。


こんな時にお団子食べても喉につめそう、と冷や汗まで出てきて私は小さく頭を振った。



「い、いえ・・・・・・私、まだ仕事が・・・・・・終わってない、ので・・・・・・」




おどおどと視線を下げた私を不思議そうに藤堂さんは首を傾げた。




「ちょっとくらいいいんじゃねぇ? なぁ」



「・・・・・・僕の買ったお団子は食べれないんだって」



「……っ!」



そういうわけじゃない、と思ってはっと顔を上げると苛立ったような・・・・・・最初に会った時みたいな目で私を見る沖田さんに喉がひくりと震えた。




「仕事終わってないならこんなとこで無駄話せずに仕事しなよ。大体ね、平助くん、居候にお土産とか渡さなくていいよ。それにこれ以上太っても困るしね」



「……っ!」




意地悪な物言いに胸がぎゅっとつまった。


自分だって苦手だって避けてるのに、こんな風に嫌なことを言われたら余計に辛い。



・・・・・・沖田さんは意地悪だ。




いつだって会えば嫌みを言ってくるし、こんな風にわざと傷つけるような物言いを選んでくる。




・・・・・・そんなに私が嫌いなんだろうか。



「っ」





やだ、泣きそう……っ!




「おい総司! そりゃ言い過ぎだって! あー、名無しさん! 総司も悪気ないんだって! 今すっげぇ機嫌悪いみたいだから、連れてくよ! 今度団子一緒に食べような!」



慌てたように藤堂さんが沖田さんを引きずって去っていく。


その足音を耳で聴きながら、私はぐいっと涙をぬぐった。

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