乙女ゲーム夢4

□宣戦布告
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ここ、どこなんだろう・・・・・・?








白い雪がしんしんと降り積もった、どこかの屋敷の中。

昔ながらの日本家屋みたいだ、と思いながら寒さにかじかむ手を擦って足を進める。


進むのも怖いけれど、止まることすら、怖かった。






さっきまで、確かに仕事をしていたはずなのに……。




夢じゃないかな。


転寝してるとか。


でも寒さも感触も風の音も全部リアルで。



怖くてたまらなかった。


とにかく尋常ならざることが起こっているのが理解できて、でもそれをだからってどうすることも出来なくて。




「ここ、どこ……っ」




「誰?」



「……っ」




怪訝な声をかけられてはっと顔を上げると、縁側から男の人が私を見ているのが分かった。


彼は私から視線を逸らさないまま縁側から庭に降り、私へとゆっくり足を近づけてくる。




「あ、あの、ここは……っ」




「新選組の屯所に何の用事? ねぇ……警備をかいくぐってここに入ってくるって、何者?」





すらり、と引き抜かれた銀色の煌き。



冷たく月の光りを弾くそれは・・・・・・明らかに真剣だった。




時代劇によく出てくる、刀。





え、なに?




なんで、そんなものがあるの?




夢?


それとも現?









ただこれが現実だと教えるように私の心臓はどくどくと音高く鼓動を刻み。






「答えないなら・・・・・・斬るよ?」





男の小首が傾ぐ。


さらりと頬を流れた髪と、鋭く眇められた瞳と、その瞳に宿る冷たい光。




なんだかうるさい。


ひどくうるさい。



これ、は、この音、は・・・・・・何?



ドキドキする自分の心臓の、音。

短い間隔で吸い込む空気の、音。





それに気づいたと同時に、男の顔が一気に近づいて現実味の薄い頭で、距離を詰められたのだと気づいた。




「ひゅ……っ!」




男の唇が弧を描く。








そして、冷たい光が空気を斬って。





「よせ、総司!」




「!」



「!?」




闇を切り裂く一喝に、男の動きがぴたりと止まった。


けれどその姿勢は低く、首に当たる刀の冷たさと鋭さは本物で、本気で斬るつもりだったのだと気づいて戦慄した。





あと一歩遅ければ。





膝からかくりと力が抜けてへたり込む。


首元が気持ち悪くて震える指先で触れると、赤い血がついてきた。そうと気づくとぴりぴりとした痛みも覚えて。



「近藤さん・・・土方さんも」



不服そうな男の声にぼんやりと視線を上げて彼の視線の先を追いかけると、そこにいたのは大柄な男の人ときついけれど綺麗な顔をした男の人で。



「不審者ですよ。何者か聞いても答えないし……なんでこんな時期に白い着物一枚なんだか・・・・・・」




言われて初めてはっと自分の姿を見ると、確かに白い着物を見にまとっていた。



「まるで、死に装束じゃないですか」



軽く肩を竦めて言い放った男に、私も私でぞっとする。


まさに、死に装束みたいだ、と。



「いかんぞ、総司! いくら不審者でも、突然切りかかるとはなっとらん!」


「・・・・・・近藤さんがそう言うなら・・・」


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